退団に向けてのご挨拶(市川しんぺー)

昨秋、劇団に気持ちを伝え、メンバーには、その我儘に真摯に向き合って頂きました。
そして、本日を持ちまして猫のホテルを退団することになりましたので、拙いながらその気持ちなどもなぞりながらご挨拶に替えさせて頂きます。

演劇的な骨格も血肉も猫のホテルで培われたものだと思っています。
外部での舞台や映像に携わる時も何かしらを猫のホテルに持ち帰る気持ちで過ごしていました。
猫のホテルのメンバーだからこそ出会えた人々、見られた景色ばかりです。

それなのに何故、と思われるでしょうが、明確に答えるのは難しいです。
この先に明確なビジョンが見えている訳でもないです。

もしかしたら猫のホテルに甘え過ぎていた自分と決別したいのかも知れません。
それにしても、なにもはっきり宣言しなくてもとも言ってもらいましたが、それは甘えが過ぎるのではと思いました。

かなり若い頃に、生活苦から「演劇を辞める」と告げた時、千葉さんから「じゃあ、もう会えなくなるね」と言われた私ですが(その日の内に引退は撤回しました)、今回は「またいつか一緒に出来る事があったら」と声をかけてもらいました。少しは自分も変化出来ていたのでしょうか。

これまでも、そして、今回の件にも、厄介な私に真っ直ぐ向き合ってくれたメンバーの皆様には感謝しかありません。30年以上、大変お世話になりました。

猫のホテルはこれからも自分たちのペースで傑作を創り続けていく事でしょう。
舞台上に自分がいない事に大きな違和感を持ちつつも、必ずや劇場に駆け付けたいと思います。
猫のホテルファンの皆様には申し訳ないですが、自分が恐らく一番のファンになると思います。

「やっぱり猫のホテル出身の人は違うね」と言われる様に精進します。
これからも、猫のホテル同様、見守って頂けたら幸いです。

また何処かで。

2023年 春
市川しんぺー